大人の韓国留学 50を過ぎた私の留学の旅思い出日記

50代で1年間韓国の大学の語学堂に語学留学しました。帰国してしばらく経ちますがあの時の気持ちを残しておきたくて書いている思い出日記です。

留学生活で出会った食べ物 ―ホットク編―

一年住んでみて一番おいしかった食べ物は? と聞かれれば、迷わずホットクと答えます。南大門市場の野菜ホットク。

初めて食べたのは真夏、たしか語学堂の5級の修了式を終えて6級が始まるまでの休みの期間、大した目的もなくふらっと出かけた日でした。実は休みに入る前、20代前半のクラスメイトが「週末に南大門に行ってみたけど全然面白くなかった~」と話しているのを聞いていました。訳を聞いてみると、普通の物ばっかり売っていたというのです。普通の物? 生活用品? 大学生がつまらないならおばさんには面白いのかも、と行き先決定。

 地下鉄をソウル駅で降りて北に少し歩くと崇礼門(通称南大門)が目に入ります。都心の大きな道路の真ん中にドカンとこういう歴史的な建造物が現れるところがソウルの魅力です。

  

表側と裏側、それに私の好きな天井画を写真に収め、人波に乗って東の方に流れていくとそこが南大門市場の入り口。早速かなりの行列が目に入りました。何かと思ってのぞいてみるとこの暑いのにたっぷりの油でホットクをジュージュー焼いているのが目に入りました。

計画はとくにありませんでしたから、まずは長い列の最後尾に並び、それから検索。コネストさんの記事によれば、どうやらかなりの有名店。しかも野菜ホットクが人気とか。

いやいや、ホットクといえばシナモンと黒砂糖の香りと甘さがたまらない甘々おやつ。初めてソウルに行った時、狎鴎亭の語学学校の近くで食べた500ウォンのペラペラ、カリカリの素朴なホットクに感動した覚えがあります。その味が忘れられず、日本でもよく材料キットを買って作っていたほどです。

行列の先を鋭い視線で見つめ、耳を皿のようにして聞いてみました。若いカップル、おじさん、日傘をさしたおばあちゃんと孫たち……地元民の方たちが結構な確率で「野菜(ヤチェ)」と注文しているが聞こえてきます。そうか、この店はやっぱり野菜なんだ、ここでしか食べられないなら……と悩んだ末に野菜ホットクを一つ注文。二つ食べられる大きさではなかったのが残念です。

野菜ホットクといっても中身は野菜たっぷりのチャプチェ。小さな屋台の前に色とりどりのパプリカをはじめ色々な野菜の入ったソース鍋が置いてあり、焼きあがったホットクにそれをかけて客に渡しています。いかにも秘伝のたれっぽいのですが、パプリカって赤や黄色できれいだけど、そんなに味が出るんだったかなとその時は疑心暗鬼でした。選択、間違えたかも。

目の前で焼きあがったばかりの熱々の野菜チャプチェホットクを受け取ると、食べられる場所を探して市場の路地へ。日本でなら絶対にやりませんし、できませんが旅人は怖いものなし。おばさん一人、道端で立ったまま私の手を広げたくらいの大きさのホットクにかじりつきました。これかー。なるほど確かにこれは納得のおいしさです。

チャプチェの味が濃いのですが、塩辛くもなく、ソース辛くもなく、甘すぎもせず、野菜の旨味がしみ込んでいる感じ。ドラマで見る料理上手なお母さんみたいに、透明なビニール手袋をはめた手でチャプチェを揉みこんでいる姿が浮かびます。プリプリのこのチャプチェのゆで加減は私の作るえせチャプチェとは全然違う代物。

その後日本からお友達がソウル旅行に来たときは、逆ルートでまずここに並んで野菜チャプチェを買ってから、ソウル駅にお迎えに行ったほどです。みんなに大好評でしたからおばさんたちの口にはまず合うこと間違いなしの野菜チャプチェの熱くて暑い思い出です。

 

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