大人の韓国留学 50を過ぎた私の留学の旅思い出日記

50代で1年間韓国の大学の語学堂に語学留学しました。帰国してしばらく経ちますがあの時の気持ちを残しておきたくて書いている思い出日記です。

留学生活の思い出 ー韓国文学翻訳賞授賞式編ー

 先日、2024年韓国文学翻訳新人賞の公募案内が発表されました。現代文学部門の課題作品が収録された原書2冊の入手にようやく成功したところです。短編小説2作のうち1作を選んで応募できるのでまずは読んでみているのですが、読みながら2022年の授賞式のことを思い出しています。私、授賞式に参加、いや参列したことがあるのです。

 クリスマスも近い12月の初旬、平日の夜に江南のCOEX HALLでその式は行われました。コエックスと言えば天井まで高々とそびえるきらきら本棚で有名なピョルマダン図書館。その図書館のあるモールの隣には素敵なホールがあって、渡韓してすぐに出かけた国際図書展の会場もそこでした。

 授賞式で新人賞を受賞されたのは翻訳勉強会の尊敬する大先輩。授賞式の頃たまたま私がソウルに住んでいたので、付き添いで二人まで一緒に行けるからどうですか?とお誘いくださったのでした。大先輩と言うのは気持ちの問題で、年齢は私の方がかなり上をいっています。ただ画面の向こうでいつもニコニコしながらも、物語だなぁ~と思えるような日本語がするする出てくる、一体この人は何なんだろう、さりげないのに凄すぎると心から尊敬する翻訳の大先輩です。

 この勉強会にはその前年に古典部門で新人賞を受賞された先輩もいらっしゃって、全く訳がわからないほど凄いのですが、とにかくそんなところに籍を置かせていただいているだけで光栄ですなどと言っていないで、私も誰かを誘って授賞式に行けるよう精進せねばと思うばかりです。

 授賞式には翻訳大賞、功労賞、映画部門やウェブ漫画部門の新人賞など、受賞者の方々が世界各国から参加していました。年度や部門によっても違うようですが、この年の文学部門はフランス語、ロシア語、ベトナム語など9か国語。受賞者は渡航費、滞在費も翻訳院もちでご招待を受けるそうで、文化発信への国の力の入り具合が窺えます。招待されていないのに自主的に参列者に加わった私まで式後の食事やお土産の恩恵にあずかり、とても素敵な青磁の皿でしたので、これはすごく特別な物だからと言って母への土産にさせていただきました。ありがとうございます。

 ところでその時ソウルにいた私の語学留学の目的は韓国語のレベルアップと韓国社会を肌で感じてみたい、そして何より韓日翻訳を学びたいということでした。翻訳に特化するなら韓国文学翻訳院の翻訳アカデミーや翻訳大学院で学ぶ方法がありますが、残念ながら私の韓国語はまだまだまだまだそのレベルにありません。そこで、語学堂の先生曰く「大学院やアカデミーよりずっと軽い課程」である語学堂の通翻訳課程で学んで来たのです。

 帰国後も勉強を続けながら今一番思うことは、翻訳というのは原文を書いた人の意図を汲みとることがもっとも大切ということ。それを適切な日本語にするときに作法やテクニック、表現力ももちろんとても大事だけれど、汲み取れていなければその先をいくらあがいてみてもダメなようだということです。

 新人賞を受賞された先輩の作品を翻訳院のウェブ図書館で読んでみてそれがよくわかりました。この年の課題作は父娘のほんわかとした物語なのですが、そのほんわかした感じが最初から日本語で書かれたみたいにほんわかしていて、その先輩も本当にほんわかした方なのです。人間性がにじみ出ているというのはこういうことかとため息をつきながら心から納得したのでした。

 

今年の課題作は、「借金の話」と「娘を殺された男の犯罪の連鎖の話」。さて、どちらが私にぴったりなのか、どちらをより汲み取れそうか、今懸命に考えているところです。

 

#韓国文学翻訳新人賞 #赤い実  #韓国文学翻訳院